肝臓の病気

肝臓の代表的な病気

A型肝炎

肝炎を起こすウイルスには様々な型がありますが、そのうちA型肝炎ウイルス(HAV)によって起こるものがA型肝炎です。このウイルスは保菌者の糞便から排出され、それによって汚染された食物や、汚染された手で調理したものなどを摂取することでうつります。
潜伏期間は約1か月で、発症すると倦怠感などとともに黄疸の症状が起こり、時に劇症肝炎まで至ることがあります。日本では衛生環境が整ったこともあり、60歳以下の世代ではほとんど免疫がありません。海外へ渡航する際などにはワクチン接種が勧められます。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)によって起こるのがB型肝炎で、日本では罹患者の多いウイルス性肝炎です。人の血液や体液によって伝染するため、性的な接触や注射針を使い回す麻薬や刺青のほか、保菌者の母親からの母子感染が主な感染経路となります。感染した時期や体力などによって一過性のものと、半年以上にわたって感染が続く持続感染に分けられ、持続感染になるとB型慢性肝炎と言われます。B型慢性肝炎になると、ウイルスを体内から駆除することが難しくなるため、肝臓の炎症を鎮め、ウイルスの活動力を低下させる治療が主になります。

C型肝炎

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって発症する肝炎で、日本ではB型肝炎とともに罹患者の多いウイルス性肝炎です。感染している人の体液や血液に接触することで伝染しますが、B型と異なり性行為による感染率は低く、使い回しの注射針や刺青によるほか、母子感染があります。7~8割の人が持続感染となり、適切な治療を受けなければ肝硬変や肝臓がんに進行してしまうリスクが高くなります。治療はウイルスの除去を目的とした抗ウイルス療法、インターフェロン療法や、炎症の進行を抑えて、肝機能を維持させるための肝庇護療法とよばれる方法などを行います。

脂肪肝

肝臓に中性脂肪がたまっている状態のことで、肝臓細胞の30%以上に中性脂肪が認められた場合、脂肪肝と診断されます。摂取した食物に含まれる脂肪分は、十二指腸から小腸へと進むうちに脂肪酸やその他の物質に分解され、肝臓へと運ばれます。しかし、脂質の多い食物を摂取し過ぎると、肝臓に運ばれる脂肪酸が多くなりすぎてしまいます。また、アルコールの多量摂取があると、肝臓の働きが抑制され、脂肪酸を分解することができなくなります。こうして脂肪肝の状態になっていきます。脂肪肝は初期にはほとんど自覚症状がないのですが、メタボリックシンドロームとも大きく関わって、脂質異常から動脈硬化へつながり、肝硬変や肝臓がんのリスクも高まります。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

通常の脂肪肝は、お酒に関わることが多いのですが、近年ほとんどお酒を飲まない人が脂肪肝(非アルコール性脂肪肝疾患=NAFLD)となり、自覚症状がないにも関わらず、その後肝炎をおこす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が、肝硬変や肝臓がんへと移行するリスクが高く問題となってきています。発症の原因ははっきりとわかっていませんが、肥満や糖尿病、脂質異常症などがきっかけとなるほか、薬剤によるものもあるとされています。肝生検を行い、確定診断することになり、治療としては食事の栄養バランスを心がけ、適度な運動をするなど、生活習慣の改善が大切です。

肝硬変

肝臓が慢性的に炎症を起こすと、だんだんと肝臓の細胞が繊維状に変質して肝機能が失われていきます。これが肝硬変です。肝臓は大きい臓器で、肝硬変も初期のうちは、正常な細胞が失われた部分をカバーしていくため、自覚症状がありません。しかし、進行するにつれ、正常な肝細胞がどんどん減少し、腹水が溜まる、色が濃い尿がでる、黄疸などとともに、疲労感、倦怠感、食欲不振などの状態となり、微熱が続き、手の平が赤くなる、クモ状血管拡張などの特徴的な症状があらわれ、肝臓がんのリスクも高まります。早期に適切な治療を始めることが重要です。

肝臓がん

肝臓に発生するがんには、肝臓自体から起こる原発性のものと、他の部位のがんが転移して起こる転移性の2種類があり、原発性の肝臓がんは肝硬変が原因となるものがほとんどです。初期には自覚症状がほとんど無いため、定期的な血液検査や超音波による画像検査などによって早期に発見することが大切です。また予防として、生活上は食事のバランスやアルコール飲料を飲み過ぎないこと、生活のリズムを守ることなどが大切です。

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